学生トライアスリート雑記

練習記録とレースレポートと+α

情報は少しでいい

最近はグローバル化とインターネットの隆興で世界中に様々な情報が溢れているし、探しているそれに簡単に辿り着くことができる。YouTubeで動画はいくらでも見れるしFacebookTwitterで各界の有名な選手が発信した情報にすぐに繋がることもできる。小学生や中学生でも高度な技術を知っていたり、最新のトレーニングについて知識を持っていたりもする。下手すれば勉強をしない指導者よりも選手の方が知識を持っているような時代だ。ただ、選手は実践家であって研究者ではない。最新の知識を学び様々な観点からトライアスロンを学ぶことは重要ではあるけど、それ自体を決して目的にしてはいけない。言い換えるなら、選手は自分が消化できる最低限の情報さえ持っていれば十分、ということ。逆に情報は積極的に捨てていかなくてはいけない。


インターネット上には様々な成功談、体験談があり、その経験をもとにアドバイスを発信している。インターネット上に限らず、周りの同期や先輩が「自分はこういうふうに考えて強くなった」とアドバイスをかけてくれることは少なくないだろう。それらのアドバイスはきっと正しい。その選手は自分の言っていることを徹底的に反芻してやり込んだからこそ実際に結果を出してきた訳なのだから、おそらく正しいはず。というのも、それはその選手のコンテキストに限った話だからだ。
コンテキストというのは、文脈とか背景という意味。つまりその選手にとっては正しいかもしれないけど、全員に当てはまるかどうかはわからないということ。1つ例にとると「朝にする練習は集中力が高まるから朝練は効果的」というアドバイスがあるとして、それは正しいだろうか?僕は朝が弱いから朝練はめっちゃ苦手。だからその人にとってはそうなんだろうな、と思うだけ。つまりアドバイスや情報は結局その人の背景や状況といった内的要因を含んでいるから、鵜呑みにはできない。


なので、色々な情報を集めすぎるとどうなるかというと却って話が噛み合わなくなる。地方大会で結果を出した人のアドバイスと世界大会に出るレベルの人のアドバイスでは技術的にも意識的にもレベルが全く違うだろうし、スイマーとランナーの選手でもアドバイスは全く違うだろう。また身長や性別,年齢,その他もろもろの条件もアドバイスにおいては重要になってくる。これらのことを考えると、やはりコーチは一人で十分だと思う。全く違うコンテキストから出たアドバイスを全部受け入れていればどこかで必ず矛盾が生じてくるし、何より自分に合っているかどうかがわからなくなる。
コーチというのは本でも動画でも先輩でも友人でも誰でも何でもいいけれど、まずはいろんな情報を混ぜすぎない事に注力するといい。特に初心者や1から競技を始める人にとってはそう思う。下手に色々な人からアドバイスをもらって、良いところを取り入れようとすると意見と意見がぶつかり合ったり、何をすればいいのかという迷いが生じる。それならまずは「これだ!」と決めたコーチに従ってそれができるようになってから、色々取り入れていけばいいと思う。
良いか悪いかという判断は置いておいて、全てをそのまま吸収するようにすること。そしてある程度要領を得た人であれば色々な情報を取り入れてもいいと思うけれど、自分の軸をぶらさないことはどのレベルであっても重要なことだと思う。つまり「まず自分のコンテキストがあって、そこに合いそうな情報を取り入れていく」という感じ。何でもかんでも取り入れるというやり方は下の下。もしそうなってしまえば、自分のやりたいことを少しずつ見失っていくだろう。いつかの僕の様に。1つ例を出します。

いつも練習を考えている選手がいます。その選手は練習方法をいつも変えていて、強い選手や強い大学はどういう練習をしているのかに興味を持っています。そんな情報を調べながら、毎回違う練習をしている、そんな選手です。

気持ちはわからないでもないけど、こういう風に練習を変え続けることは悪手だと思う。競技に新しい要素を取り入れようとすると、大きい変化で半年から数年、小さい変化でも数ヶ月は意識して練習しないと身体に馴染まない。だから練習方法を探してやり方を変え続けていれば、結局のところ何も身につかない。それならベストな練習方法でなくとも同じテーマで継続することの方がよほど良い。きっと「理想の練習」というのはあると思うけど、それを探すことを練習の目標にしてはいけない。

“No Silver Bullet”
Frederick Phillips Brooks, Jr

銀の弾(Silver Bullet)とは悪魔や吸血鬼を1発で撃退できるというもので、理想の練習は存在するのか?という問題に絶対的な正解がないように、「全ての問題に通用する万能的な解決策は存在しない(No Sliver Bullet)」という意味です。


「これだ!」という選手,情報,アドバイスがあれば、それにとりあえずしばらくは従えばいい。この選手みたいになりたいと思えば、その選手の真似に全力を尽くして他の選手のいいところを取り入れようなどと思わなければいい。「自分はこのスタイルで戦う」というのが決まれば、他のスタイルには無暗に手を出さないこと。情報を集めるのは簡単だけど身体に馴染ませるには時間がかかるもの。そしてたくさんの事が同時にできるほど人間は器用ではない。さらに言えば自分のコンテキストに合わないアドバイスは捨てても構わない。というよりもむしろ捨てるべきだとすら思う。それが確かに合理的な意見であっても自分のスタイルに合わないときもある。そういうときに無理して従うと逆に狂ってしまう。だから情報は選ぶべきだと思う。
少ない情報と多くの練習。
これはトライアスロンや競技スポーツに限らず、何にでも同じことが言えるだろうけどね。

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12/15 13:58
第2供養回

→第1回 「一度立ち止まって、」 - 学生トライアスリート雑記
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